定例講義|億トレニートから学ぶ投資手法とマインドセット
本記事は、JPSI定例講義「億トレニートから学ぶ投資手法とマインドセット」の内容を、記事として再構成したものです。
記念すべき第1回講義では、早稲田株式投資サークル「Forward」のOBで、現在は株式投資で生計を立てる専業投資家の橋本卓也先輩をお招きしました。テーマは「投資手法と投資家としてのマインドセット」です。
橋本先輩の経歴と、投資を始めたきっかけ
橋本先輩は2019年に早稲田大学商学部へ入学し、2023年に卒業しました。卒業後は一度会社員として就職したものの、残業の多さから退職。現在は誘われた会社で働きながら、株式投資でも生計を立てています。投資家としてのキャリアは約7年に及びます。
投資を始めたきっかけは、私立の中高に通うなかで経済格差を肌で感じたこと、そして中学2年生のときに読んだロバート・キヨサキ著『金持ち父さん 貧乏父さん』に強い影響を受けたことでした。
当時は年齢の制約から自分の証券口座を持てず、実際に投資を始めたのは大学生になってからです。大学入学時点では日経平均の仕組みも知らない状態で、投資サークルへ入ったあとも具体的な指導を得られず、以後は独学を続けてきたといいます。
投資家としてのマインドセット
これまで1,000人規模の投資家を見てきた橋本先輩が強調するのは、成功する投資家と成功しない投資家を分けるのは、具体的なテクニックよりも「最初のマインドセット」だということです。
学校の勉強には答えが1つあることが多い一方、投資の世界に唯一の正解はありません。自分に合った答えを見つけることが重要で、教科書どおりの正解を求めすぎる姿勢は、投資では弱点になり得ると話します。
橋本先輩自身、受験勉強を通じて、教科書を読むだけでなく自らアウトプットするほうが成長できると気づき、その学び方を投資にも応用してきました。特定の手法に固執せず、その時々の相場に合わせて最適化する「柔軟性」を最も重視しています。
手法と指数——毎日のルーティン
日々の相場と向き合うため、橋本先輩は次の指標や作業を継続的に確認しています。
- 米国債金利の監視:株と債券の資金フローを見ながら、金利上昇局面では株式市場に慎重な見方をします。
- 米国3大指数とヒートマップの確認:ダウ、ナスダック、S&P 500とFinvizのヒートマップを使い、全セクターを見渡します。エネルギー、ヘルスケア、公益セクターが強い局面には警戒します。
- 値動きの解釈と仮説構築:他人の意見を読む前に、まず自分で仮説を立てます。メディアはその「答え合わせ」として使います。
- 天井・底を考える指標:VIX、NAAIM Exposure Index、Fear & Greed Index、Put/Call Ratioを確認します。
- チャート分析:20日、50日、100日、200日の移動平均線を確認し、エントリーとクローズのポイントを事前に決めます。
移動平均線については、「多くの市場参加者が注目する指標ほど、予言の自己成就によって機能しやすい」という考えから、王道の期間を使っています。
メディアの使い方と情報リテラシー
情報の速さという点では、新聞やテレビ、YouTubeよりもX(旧Twitter)が優れていると橋本先輩は考えています。だからこそ、フォローするアカウントの質を自分で厳しく選別しなければなりません。
マクロ分析に強い人、個別株にバイアスがある人、テクニカル分析の専門家など、発信者の得意分野とバイアスを把握し、情報を鵜呑みにせず強みと弱みを見極めることが必要です。
SNSの情報をそのまま信じるよりも、信頼できる先輩を見つけ、疑問が生じたときに質問するほうが確度の高い学びにつながります。
ポートフォリオ管理の考え方——ベクトル理論
橋本先輩は、個別株を「ベクトル」として捉え、値動きの方向性と指数に対する感応度(β)を意識した独自のポジション管理を提唱しています。同じ方向に動く銘柄を複数持つだけでは十分な分散にならず、かえってリスクを増幅させる可能性があると指摘します。
また、本来のヘッジとは「想定していないリスク」に備えるものです。自分の相場観への自信のなさを複数のポジションで曖昧にすることとは区別すべきだと話します。
保有銘柄数は5〜10程度に絞るのが橋本先輩の考えです。分散しすぎたポートフォリオは管理しきれず、結果として放置されがちだからです。
資産の最大ドローダウン(最高値からの下落率)を15%以内に抑えることも目標にしています。たとえば資産が50%減ると、元の水準に戻すには100%の上昇が必要です。損失からの回復に必要な上昇率は非対称だからこそ、大きく負けないためのリスク管理が欠かせません。
講義で登場した重要な用語
| 用語 | 講義での位置づけ |
|---|---|
| VIX | 市場が織り込む将来の変動率を示す指標。極端な水準では逆張り判断の参考にします。 |
| NAAIM Exposure Index | 米国のアクティブ運用者の株式エクスポージャーを示す指標。ポジション構築の参考にします。 |
| Fear & Greed Index | 投資家心理を示す指標。極端な恐怖や強欲を相場の転換点を考える材料にします。 |
| Put/Call Ratio | オプション市場のプットとコールの取引比率。市場参加者の警戒感を読む材料にします。 |
| ドローダウン | 資産の最高値からの下落率。橋本先輩は最大15%以内を目標にしています。 |
| β/ベクトル理論 | 指数に対する感応度を「大きさ」、値動きの方向性を「向き」として捉えるポートフォリオ管理の考え方です。 |
| ヘッジ | 想定外のリスクが起きたときに資産を守るための手段です。 |
SUMMARYこの記事のまとめ
- 投資では、唯一の正解を探すより、自分で仮説を立てて検証する習慣が重要。
- 情報源の得意分野とバイアスを見極め、メディアを仮説の答え合わせに使う。
- ドローダウンを抑え、銘柄の値動きの方向と感応度を意識してポートフォリオを管理する。
本記事には講演者個人の経験と見解が含まれます。特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。本文中の数値・事例は講義時点の情報に基づきます。